ターゲットのニーズに寄り添ったレシピ開発企画からそのおいしさと魅力を視覚的に表現するまでのデザインワーク。外部のプロフェッショナルとタッグを組むことで実現可能に!
朝日生命保険相互会社が発行している情報誌「ゆめ探求」。コアターゲットは30〜40代の女性で、料理レシピ、美容や健康、営業職員の紹介などの情報を中心に構成されています。ブックマークでは企画・編集からアートディレクション、デザインを担当してきました。その中から、今回は「簡単・美味しい・見た目良し」にこだわって企画した“料理レシピ企画からデザインができるまで”にフォーカスしたストーリーをお届けします。
[designers]
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レシピ開発企画の経験ゼロからのスタート。試行錯誤しながらも、自分なりにアイデアを形にしていった
Y.Watanabe: 情報誌「ゆめ探求」は、私がディレクターとして初めて企画から携わったプロジェクトになるのですが、2014年から2022年まで担当させていただきました。
M.Sekine: 私は誌面のデザインを担当していたので企画にはさほど関わっていないのですが、毎回レシピのアイデア出しから企画に落とし込むのは大変だったのでは?
Y.Watanabe: 当初は協力会社に企画全般のお手伝いをしていただいていました。右も左も分からない状況の中、必死にノウハウを詰め込んでいたのを覚えています。色々な条件がある中で優先すべきは何か、ターゲットに合っていて、実現可能なレシピになっているか、など。季節感やトレンドも考慮する必要がありましたね。
外部の専門家の協力なくしては成立しなかったレシピ企画。プロフェッショナルから多くを学び、引き出しを増やした
Y.Watanabe: ひと通りこなせるようになってからは、自分で企画立案を行いました。ラフの段階で食のプロフェッショナルと連携し、新しいアイデアや考え方、知見を取り入れながら、つくり込んでいきました。レシピ開発に関しては完全に私の専門外なので、食のプロならではの豊富な知識や情報、コツなどは本当に勉強になりましたね!
M.Sekine: レシピ開発は専門外といいつつ、誌面に起こした時の見え方やバランスを想定した企画内容になっていたのかなと思います。
Y.Watanabe: そうですね。見開き2ページの特集掲載だったので、見やすさや読みやすさを考慮し、基本的には3品のレシピを掲載していました。レシピを決定するにあたっては、料理の見栄えだけでなく、食材の偏りはないか、そもそもテーマやコンセプトと相違はないかなど、ディレクターの観点と、食のプロからの観点で折り合いをつけることが必要な時もありましたね。
レシピ決定後の撮影ディレクション。撮影がうまくいくかは事前準備で決まると言っても過言ではない!
M.Sekine: レシピがある程度決まってから、撮影ラフを作成されていましたが、テキスト原稿や料理のイメージ画像など、かなり詳細を詰めた内容でしたね。基本的に撮影はやり直しがききませんし、それだけ準備が大切、ということなのでしょうね。
Y.Watanabe: おっしゃる通り、撮影は事前準備でうまくいくか決まると言っても過言ではありません。まずは自分が読み手の立場になって、紹介するレシピやレシピに付随する情報をより理解し、どのような訴求だと印象にのこりやすいのか考えます。それからどのようなビジュアルを撮影するか検討するために事前のリサーチを行います。最後に必要な素材をまとめ、撮影ラフに落とし込みながら、具体的な演出の準備をしていきます。この段階では食のプロはもちろんのこと、撮影のプロにも力を借りて、ひとつのものを作り込んでいきました。
テキスト原稿も含めた撮影ラフ。ヌケやモレが無いよう、レイアウトも仮でおこしている。
撮影の現場で想定以上の良いアイデアが生まれることもある
M.Sekine: お料理の撮影は楽しかった反面、本当に大変でしたね…。誌面構成に合わせた構図にしつつ、料理が変色したり乾燥しないように時間をかけずに撮影する必要があったし、時にはレシピ通りにいかず、急遽食材を変更したし、作り直して撮ったりしましたね。
Y.Watanabe: 撮影はジャンルに限らず、当日のハプニングはつきもの。どのような状況に陥っても臨機応変に対応できたのは、綿密な準備と打ち合わせ、撮影当日の効率的な進行や、食のプロ含め、撮影チームとのスピーディーな連携プレーがあってこそ、なんですよね。
入念な準備をしても、思い通りに進まないことは多々ありましたが、ディレクターとして私が常に心がけていたのは、「自由でオープンな意見を言い合える雰囲気づくり」です。撮影を進行する中で、各専門家のさまざまな意見が自由に飛び交い、想定以上のクオリティで撮影できたことも多々ありました。
撮影ラフを元に撮影した写真素材
レイアウト後のデザイン
効果的かつ伝わる形を創造するデザイン表現力で、企画の魅力を最大限に引き出す
Y.Watanabe: 9年間に渡り、さまざまなジャンルのお料理のレシピの企画を立ててきましたが、誌面上では読者の気持ちに寄り添いつつ、テーマに合わせた世界観を作り上げてくれましたね。
M.Sekine: 情報誌のコアターゲットである「毎日忙しく家事や育児をこなすママ」の「美味しそう」や「簡単に作れそう!」という気持ちを掻き立てるような誌面づくりを心がけていました。ここでいくつかデザインを紹介したいと思います。
余った料理をアレンジして無駄なく美味しく食べ切る食品ロス削減企画。
[テーマ]
余ったおせち料理を上手に使う「アイデアごはん」
[ デザインのポイント]
タイトルまわりに明朝体の書体を使い、おせち料理のイラストをバランス良く配置することでお正月感を出しつつも、全体の色使いやあしらいで洋食の写真を掲載しても違和感のないデザインに。
美や健康は気になるけど甘いものも食べたい!そんな読者が罪悪感なく楽しめるスイーツを。
[テーマ]
ヘルシーなおやつはいかが?「Guilt Free Sweets」
[ デザインのポイント]
「食べても罪悪感を感じない、体に優しくて嬉しいスイーツ」と聞くと質素なイメージになりがちだが、読者の「食べてみたい!」気持ちを掻き立てるべく、あえて写真や全体の色使いに華やかさを持たせている。テーマに合わせ、食材の効能や効果もしっかりアピールしています。
夏バテ防止に、美容や健康にも効果が期待できる、忙しいママの強い味方。
[テーマ]
はじめてる?グリーンスムージー
[ デザインのポイント]
スムージーの緑色に偏らないよう、使用している色や飾りを暖色系にすることで全体的に明るく軽やかなデザインにし、大人も子どもも楽しんで作れるレシピであることをアピールしています。写真についても見え方がワンパターンにならないよう、サイズやアングル、構図を変えて撮影する工夫をしました。
M.Sekine: テクニカルなところで言うと、最適なタイポグラフィで読みやすく、写真で料理の魅力を伝え、色彩や装飾をほどこすことで世界観を演出し、読者の心を揺さぶるような誌面をつくりあげるのですが、その素材ひとつひとつがそれぞれのプロフェッショナルの技術や想いの賜物であり、グラフィックはその集大成なんですよね。
─ F I N ─